T 歴史と伝統

 ティン・ホイッスルは、イギリスのサフォークにある小さな村、コゥニー・ウェストンで農場労働者として働いていたロバート・クラークによって作られました。ロバート・クラークは貧弱な賃金を補うために、その地方の鍛冶屋の助けを借りて必要な道具を作って、ティン・ホイッスルの生産を試みることにしました。1843年、クラークは所有していた木製のフラジオレットをコピーして、最初のホイッスルを作りました。より多くのブリキ、ハンダ、燃料などを入手する為に、自身でそれを演奏し、ティン・ホイッスルを売りました。クラークが演奏すると必ず多くの人が集まってきたようです。彼は又、鉄道会社や炭鉱で働くアイルランドの労働者のために演奏をし、彼ら労働者の曲をたくさん覚えました。クラークは彼らにティン・ホイッスルを売り、そして彼らはイギリスでの仕事が終わった時に、アイルランドヘティン・ホイッスルを持って戻ったのです。
 裕福になるにつれて彼は、マンチェスターの近くに家族のための家と、ティン・ホイッスルを作るための工場とを建て、最終的に15人の人々を雇い、すぐに他の国々へティン・ホイッスルを輸出しました。
 どうしてなのかわかりませんが、ティン・ホイッスルは、「ぺニー・ホイッスル」として知られるようになりました。それが1ペニーであったから?というのは疑わしいことですが、街のいたずらっ子がぺニーを稼ぐためにそれを演奏したと言われています。
  ティン・ホイッスルは、アイルランドの伝統音楽で使われる多くのテクニックを養うことが可能です。とても単純な楽器ですので、アイルランドでも多くの人がこの楽器を使って最初の曲を覚えます。しかし本当にいい演奏をするためには、とても難しい楽器です…。


Uホイッスルの構え方

@吹き方
 吹き口に近い方を左手で持ち*、上から順番に人差し指、中指、薬指で押さえます。
 残りの3つの穴を右手の人差し指、中指、薬指で押さえます。
 唇と両親指で支えます。(小指を使っても構いません)
 歯よりも奥には入れないで下さい。
 噛まないで下さい…。
*アイルランド現地の演奏家には右手を上、左手を下に構える人も少なくありません。ホイッスルを演奏する際はどちらでも構いませんが、キーつきのフルートを持った時きっとショックを受けるでしょう…。

A穴の押さえ方
 指は常にリラックスさせた状態で、穴を完全に押さえます。
 隙間から空気が漏れると、かん高い音になったり、音が外れたりします。

B吹き方
 やさしく吹いてください。
 強く吹くと、1オクターブ音が高くなります。

V 運指表と音階(D管のホイッスルの場合)


 ニ長調の音階と音域(幹音)



                                          
 あまり使わない音(派生音)

                *1              *   *   *
*1の音はト長調(G)の譜面を演奏する際必要不可欠な音です。
その他の*は覚えておけばうまくなった時(?)に便利でしょう!
                                             

注意!
   
その一、 1オクターブ目と2オクターブ目の運指は、ほとんど同じです。
      出た音を良く聴き、息の量で調節してください。
   
その二、 D管のホイッスルでは、#2つ(ニ長調、ロ短調)、#1つ(ト長調、ホ短調)の楽譜を演奏する事しか出来ません。
      ハ長調、イ短調の一部の曲を演奏することも可能です。
       派生音として運指は山ほど考えつきますが、ホイッスルはダイアトニックな楽器(ブルー
      スハープなんかと同じ)ですので、その楽譜に適した調の楽器を用意しましょう!

その三、 同じD管の楽器でも、メーカーによって微妙に指づかいが異なることがあります。

W 呼吸について

短く吸って、長く吐く!
 ホイッスルを上手に演奏するためには、息の吸い方、吐き方(吹き方)がとても大切です。特にリールやジグを演奏する際は、素早いブレスで長く吹くことが大切です。
ロングトーン!
 管楽器の基本です。音はまっすぐに伸ばしましょう。
 *ヴィヴラートはまっすぐ伸ばせるようになってから。
息づかい!
 音の高さによって息の量が違います。低い音は優しく、高い音はしっかりふきこみましょう。

X 音のでかた

 ホイッスルは息を吹き込めば音が出ます。これは歌口と呼ばれる、音を発生させる穴があって、息があたる部分は薄く刃先(エッジ)のようになっています。吹き込んだ息は、ウィンドウェイを通ってエッジにあたると、摩擦(カルマン渦)が空気を振動させます。この空気の振動が音として鳴ります。長い棒を振り回したらヒュンヒュンと音が出るのと同じですね。ウィンドウェイがついてるホイッスル、リコーダー、オカリナは全く同じ構造で音がなります。よく似た構造でウィンドウェイがない楽器には、フルート、尺八、ケーナなどが挙げられますが、それらは直接唇で息の流れをコントロールしてエッジにあてます。違う楽器のように見えますが、みんな同じ理屈で音が鳴ってます。

タンギングについて
 タンギングとは舌で音を切る方法です。クラシック音楽では一般的に用いられますが、アイルランド音楽の場合、基本的には用いません。アイルランドのバッグパイプ、「イリアンパイプス」という楽器は口でくわえないので指で音を切ります。アイルランドの音楽ではこの楽器を規範としています。ですがホイッスルの場合は、曲のスタートやブレスのあと、立ちあがりの不安定な音をタンギングしたり、リズムを出すためや安定させるためにタンギングをします。タンギングしない吹き方を身につけると同時に、タンギングをする吹き方も身につけましょう。
          シングルタンギング t-t-t-t-    ダブルタンギング tktktktk…
          トリプルタンギング tkt-tkt-tkt フラッタータンギング trrrrrrrr…(これは特殊奏法になります)

X 曲について


 アイルランドの伝統音楽は、ほとんどの場合作曲者がわかっておりません。 (民謡=トラディショナル=Trad)
それらは、古い時代から、耳で聴き、目で見て、真似をしながら、人から人へ、地域から地域へと伝えられてきました。口伝えの音楽です。
 曲のタイトルは、ほとんどの場合、メロディとは関係がないことが多いようです。特定の演奏家や、作曲者の名前がついたものもあります。
 それぞれの曲は、32小節、24小節、16小節からなる曲がもっとも一般的です。それを2,3回くりかえして演奏されます。また、その後に別の曲をつなげて演奏することもできます。

Y  曲の種類について

アイルランドの音楽には、異なったリズムの曲があります。
ダンスと密接な関係にあるものと、そうではないものとありますが、それぞれ曲の拍子やリズムの違いによって区別できます。

リール

4/4拍子、もしくは2/2拍子の曲。(実際には2/2で演奏します。)
アイルランドでもっとも好まれている曲で、「巻く」という意味の通り、速いテンポで演奏します。
スコットランドから伝わったと考えられています。

ジグ

イングランドに起源を持つ曲です。それぞれにテンポ、リズムが違います。
  *ダブル・ジグ…6/8拍子。もっとも一般的なジグです。
  *スリップ・ジグ(ホップ・ジグ)…9/8拍子。
  *シングル・ジグ(スライド)…12/8で演奏されますが、6/8で記譜されることが多い。

ホーンパイプ

リールと同じく4/4ですが、基本的にはリールよりも遅く、独特のはずむような感じで演奏されます。
イングランドに起源を持ちます。

ポルカ
2/4拍子、テンポよく歯切れのいい曲です。ボヘミア起源の曲です。

エア
ゆったりとしたテンポで演奏します。

*その他にも、マズルカ、ワルツ、マーチ、ストラスペイ、バーンダンス、ラメントなどがあります。

メロディのヴァリエーション

多くのリールやジグでは、書かれている楽譜にブレスポイントがありません。 メロディラインを考えた上で、演奏しない音をつくり、その音を犠牲にしてブレスをとります。犠牲にする音は演奏者によってことなります。また、曲を数回くりかえす時は、メロディを少しアレンジしたり、意図的にブレスポイントを変えたりもします。



つづく(かもしれません)



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ティンホイッスルについて (zume編)